1.ビデオカメラから入力した画像を2値化するとともに縦横に4分割し、二進木結合並列計算機Cora168Kのプロセッサ要素のメモリに分散して入力するための並列画像入力回路を部分的に試作し、動作を確認した。実際にCora168Kに接続するためには画像を32分割する必要があるが、現在の方式では分割の精度に問題があり、更に研究の必要がある。 2.並列音声認識実験装置を開発し、数字、県名の2種類の単語について認識実験を行った。この装置ではマイクロフォンから入力された単語音声を8チャンネルの帯域フィルタに通して包絡線検波し、えられる8種類の周波数成分のパタ-ンのそれぞれについて各プロセッサが個別にDPマッチングによる類似度を計算し、その結果を相互に参照して認識を行う方式をとる。この音声認識方式は、耳殻の場所によって共鳴周波数が異なるという生物の聴覚システムの機構と類似していることに注目して考案したものである。 このシステムの並列認識アルゴリズムを研究し、実験装置を用いて認識率と認識速度の評価を行った。その結果96%程度の認識率が得られたが、認識時間は1単語当り12秒とかなり遅い。処理速度に関しては、使用したマイクロプロセッサがZ80であるため止むを得ないが、帯域フィルタ数を更に増やせば認識率は更に改善されるのではないかと考えている。 3.生物の視覚システムを模擬したバイオシミュレ-ションに基づく文字認識方式を考案し、これをCora168K上に実現して実験を行った。認識対象は手書き漢字とし、各文字に含まれる各種の特徴を多数のプロセッサが分担して個別に抽出し、その結果を相互に照合して文字を特定する方式をとる。抽出する特徴の種類をさしあたり62個とし、3画までの漢字50字種について認識実験を行った結果、90%程度の認識率が得られた.更に画数の多い漢字ならばもっと認識率が上がることが期待される。認識時間は1字当り3秒から10秒とかなり遅いのが問題であるが、照合方法を改善することによって短縮することが出来るものと考えられる。
|