本研究はマウス、ラットにおいてLinkage解析を行う際に有用な多型性を示すDNAマーカーを多数開発し、染色体への帰属を行うことが主たる目的である。昭和63年度の研究計画はマウス、ラットのGenomic Libraryから多型性を示すクローンを検索することであり、当年度の成果、並びに進行状況は以下のごとくである。 1.マウス、ラットのGenomic Libraryからランダムにそれぞれ、100クローンずつを選び、増殖させDNAを抽出し、これを標識しDNA Probeとした。 2.多型性を示すDNAマーカーの開発に際し経済性に加え、より多型性の高いクローンを選ぶため、なるべく少ないマウス、ラット系統で多型性を検討できる実験系を検討した。このため従来報告されているマウス、ラットでの遺伝的変異をデーター処理し、また多型性を示すDNAマーカーについてRI Strainや交配実験による染色体マッピングの解析のしやすさも考慮し、それぞれ最も適当と思われる5系統を選び高分子DNAの調整を行った。 3.制限酵素はヒトでも報告で多型が最もみられる9種を用い、マウス、ラットから抽出したDNAについて制限酵素処理し、サザンブロットを行いRFLPsを示すクローンの選択を現在行っている。 本研究と同様の実験系でヒトのGenomic Libraryでの場合、5人のヒトDNAについてサザンブロットにより1664クローンを検討したSchummら(1988)は515(30.9%)のクローンで多型性がみられること、またこのうち1つを除いては、すべてSingle locusによって支配されていることを報告している。これらのことから、本実験系で多型性を示すマウス、ラットのSingle locusに支配されているDNAクローンが多数得られることが期待できるものと思われる。
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