昭和63年度に計画した本研究の要点は、新らしく実験動物として育成されたスンクス(食虫目、トガリネズミ科)の生理学的研究の爲の基礎研究として、脳定位保定装置を考案することと、これを用いた脳内への電極刺入方法の検討であった。脳定位法については、トガリネズミ科動物がその特性として骨性の外耳道と耳胞を有しないこと、吻部が長く突出していること、外耳道の位置が顎関節よりかなり後腹側に位置すること等げっ歯目動物とは大きく異なっているため、これまで広く用いられて来ているマウス、ラット用脳定位装置を用いることが出来ない。そのため軟X線撮影と解剖的手法により下記の改良点を明らかにした。 1.頭蓋骨の定位はイアーバーのみでなくこれに突起物をつけ外耳道を指標としつつ頭蓋骨自体を固定する方法を考案した。 2.外耳道の位置が尾腹側にあるため細く長いイアバーでは、咽頭を外側から圧追して気道を閉すため、イアバーはラット用のものより約0.7mm太く3mm短い必要があることを明らかにした。 3.スンクスは吻が長くげっ歯目のように大きな切歯を有しないので切歯点の固定具を改良すると共に、背位、腹位の両方で保定できるよう改良を加えて現在装置の試作品を製作中である。 電極刺入法については、スンクスにおいて頭頂部まで伸びている厚い側頭筋の処理方法と、スンクスは絶食、断水に弱いため術後管理に配慮を要する。この点は外科用接着剤の適用と、電極を導くためのガラス細管で筋を貫通することにより解決できる見通しが立った。 次年度においては、実際に改良した装置による電極刺入実験を行う予定で、現在図譜作製用の脳標本を製作中である。 上記の研究成果は1989年5月の日本実験動物学会総会において、報告予定である。
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