Pneumocystis cariniiは、コ-チゾン投与ラット、マウスあるいはヌ-ドマウスなどの免疫機能低下または欠損動物において致死性肺炎を起こす重要な日和見病原体である。日本や米国において、ヌ-ドマウスコロニ-等で本病の汚染例が報告されているが飼育実験施設等での汚染状況については明らかではなかった。本調査研究では462匹のヌ-ドマウスを1室あたり3-10匹の単位で6ケ月間モニタ-飼育した後、回収して寄生虫学的、病理組織学的にPc感染の有無を検査した。43の医科系動物実験施設等における435匹のモニタ-ヌ-ドマウスのうち12施設(27.8%)の89匹(20.5%)から、Pcが検出された。市販のSPFを収容している飼育室群では35室中3室(8.6%)、コンベンショナル動物の飼育室群では12室中7室(58.3%)、自家繁殖されているSPF室では22室中7室(31.8%)にPc汚染が見つけられた。コンベンショナル動物飼育室における高い陽性率は、これまでに報告されていたコンベンショナル動物に対するコ-チゾン誘発Pc検査成績の高い陽性率と一致していた。自家繁殖の行なわれているSPF室が購入SPF動物の飼育室に較べて高い陽性率であったことは、短期の動物飼育実験室に比較して繁殖コロニ-には、より厳格な飼育管理法が必要であることを示唆している。Pcの汚染源は、今回の調査では特定できなかったが、既存の厳格な飼育管理施設、飼育器材を用いて微生物防御を考慮した飼育管理マニュアルを遵守すれば、自家繁殖を行なわない実験飼育環境をPcフリ-に保つ事は可能であると推察された。本調査研究の成果は各動物実験施設等の協力に負うところが極めて大きいものであったことを書き添える。
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