組成のみが与えられた結晶に対し、どんな結晶構造型をとるかを推論する人工知能プログラムの開発を目指して研究した。このためには、まず結晶構造型の定義を確立しておかなければならない。そこで、任意の結晶に対し、その空間群と原始胞内の原子の種類・数を指定した場合に、結晶構造型が何種類あるかを数えあげるプログラムを作成し、発表した。また、可能な結晶構造型を比較検討して推論するには、ランダウの相転移理論を適用するのが有効であると思われるので、そのための基本的な研究を行った。すなわち、ブラヴェ-格子を6次元空間の1点として表す場合の必要十分領域(基本領域)の確定である。これは従来Reduced Cellとして一応求められていたが、その領域は6次元空間で大きく2つに分れており、ランダウ的理論を適用するには不適当なものであった。今回我々は6次元空間で1つの凸領域をなす基本領域を求めることに成功した。この領域は6枚の境界超平面からなり、考えうる中で最も簡単な形をしている。推論の規則を作っていくのには、プログラミングの負担を軽くするため市販のエキスパ-トシステム・ソフトウェア「創玄」「大創玄」を利用することとした。また推論の規則を知るためには、まず既知の結晶構造型を集積して一種のデ-タベ-スを構築しなければならない。このため、文献はもちろん、東大大型計算機センタ-等に入っているデ-タベ-スを参照して、独自のデ-タベ-スの作成を計画中である。
|