研究概要 |
本研究は溶剤染色系に使用されている有機溶媒、あるいはその混合溶媒中における染料の状態や染料と溶媒との相互作用について、溶媒の極性や水素結合性の指標となる複数のパラメ-タ-を用いて整理することを目的とした。混合溶媒系の溶媒効果について検討する中で、アゾニアベタイン色素は周囲の極性、水素結合相互作用の変化により顕著なソルバトクロミズムを示した。このため本年度の研究においては分子集合系やシクロデキストリンなどを用いて、溶媒中とは異なる環境、疎水系-水系を設定し、その環境中におけるスペクトルについて検討した。シクロデキストリンとしては、環径の異なるα、β、γ-シクロデキストリンを使用した。アゾニアベタイン色素A(p-OH)または(o-OH)の水溶液にシクロデキストリンとピペリジンを加えた。色素Bはシクロデキストリンには包接されなかったが、色素Aはα、β、γ-シクロデキストリンに包接され、20-30nm程度長波長移動すると共に吸収強度が減少した。色素A水溶液の吸収スペクトルの変化には等吸収点がみられたので、主要因成分法(PCM)を用いた解析を行った。解析の結果、スペクトル成分は二成分または三成分系であり、色素のフェノ-ル部分が包接されたと推測できる。 分子集合系-水系としてはアニオン、カチオン、非イオン活性剤ミセルに色素Aを可溶化させてソルバトクロミズム挙動について検討した。界面活性剤濃度が高くなると、スペクトルは等吸収点をもって長波長側に移動し、移動幅はアニオン活性剤30nm,カチオン活性剤50nm,非イオン活性剤55nmであった。PCM解析の結果、アニオン活性剤は色素がミセルの外層付近すなわち親水部において錯体が形成され、カチオン、非イオン活性剤の場合はミセル内殻に水が含まれていて疎水性反応場として機能しないと考えられる。
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