(1)酒種のパン生地発酵力が、種酵母の種類によってどのような影響を受けるかを検討した結果、清酒酵母(協会酵母)を種酵母として培養した酒種が、パン酵母、ブドウ酒酵母、ビ-ル酵母を用いた酒種よりもすぐれた液内発酵力および生地膨張力をもつことを明らかにした。また、供試清酒酵母5株間には発酵能に有意の差は認められなかった。 (2)清酒酵母(協会7号)を種酵母として、15〜25℃の各温度で培養した酒種の発酵力は、その培養温度によって著しい影響を受けた。すなわち、20〜30℃で短期間培養した酒種よりも、10〜15℃で5〜7日間培養したものの方が液内発酵力および生地膨張力が大きく、低温下で培養した酒種が、その発酵力および安定性にすぐれていることを明らかにした。 (3)酒種の低温下での貯蔵性は、パン種としての実用的見地から重要であるので、完成した酒種を4℃で貯蔵し、その発酵力と生菌数の経時的変化を追跡した。その結果、原料麹の品質の差異が酒種の発酵力に多少の影響を与えるものの、5〜7日間の低温貯蔵では、酵母の生菌数には大きな変化はなく、また、発酵力も20〜30%の減少がみられたにすぎなかった。したがって、酒種の低温貯蔵はその発酵力維持のために有効であることが判明した。 (4)種酵母無添加の速醸系酒種(乳酸添加種)の培養経過にともなう微生物相の変化を調べた結果、乳酸の添加量が多くなるほど生酸菌および一般細菌の増殖は抑制され、培養時間5〜7日目にそれらの生菌数は著しく減少するが、それに対応してTTC還元性の比較的強い酵母が増加し始め、7日以降になると酒種中の微生物はほとんど酵母菌のみで占められることが明らかになった。
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