研究概要 |
核酸系旨味調味料(IMP,GMP)は、グルタミン酸ナトリウムと共に料理のみならず加工食品の味付けに広く利用されている。本旨味調味料は、食品加工や調理における加熱過程で分解を受け風味に大きな影響を及ぼす。前年度(昭和63年度)では、モデル系を用いて、IMP,GMPの加熱分解機構を反応速度論的な立場から解析したところ、IMP,GMPは、酸性状態で分解されやすく、両者の加熱分解の主経路は、ヌクレオチド中のリン酸エステルの加水分解であることを明らかにした。本年度は、この研究成果を受け、市販の即席だしの素を用いて、実際の調理加熱過程におけるIMP,GMPの加熱分解を検討した。また、だしの素粉末の貯蔵中におけるIMP,GMPの安定性及び多の食品成分との相互作用についても検討した。その結果、即席だしの素には、IMPのみが含まれ、その水抽出液(だし汁)を加熱すると、IMPはpH4とpH7では一次反応的に分解した。その反応速度定数は、pHが低いほど、また温度が高いほど大きかった。これは、前年度で明らかにしたIMP単独溶液(モデル系)の場合の反応速度パラメ-タ-と顕著な差はみられなかった。しかし、pH9でのIMPの分解は一次反応的な挙動をとらなかった。このことは、IMPがだしの素中の他の食品成分と何らかの相互作用をしたことを示唆する。また、水分活性0ー0.8,60℃で貯蔵しただしの素粉末中のIMPは、水分活性0ー0.5ではほとんど分解しなかったが、水分活性0.8ではかなりの分解が進み、他のだしの素成分との間に何らかの変化が起ったことが示唆された。核酸系旨味調味料と他の成分との相互作用で明らかになったことは、IMP,GMPが脂質の過酸化反応に対して抗酸化能を有することであった。この抗酸化作用の機構は、IMP,GMPが金属イオンにキレ-ト作用をすることによって起こることが明らかになった。
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