1.ラットを4群に分け、それぞれに、グルコース(A群)、2%米糠トリプシンインヒビター(RBTI)を含むグルコース(B群)、20%カゼインを含むグルコース(C群)、2%RBTIと20%カゼインを含むグルコース(D群)を30分間与えた。その後一定時間ごとにラットの胃と小腸を摘出し、それらの内容物の分析と小腸内プロテアーゼ活性の測定を行った。 2.各食餌成分の胃内滞留時間は、グルコースではD群>C群=B群>A群、総蛋白質ではD群>C群、RBTIではD群>B群となった。 3.免疫拡散法(SRID)と活性法(ACT)による胃内RBTIの定量値は、D群でほぼ等しく、B群ではSRIDでの値がACTでの値を上回った。 4.小腸内にはグルコースは認められず、一方TCA不溶蛋白質はAとC群では少量なのに対し、BとD群では下部小腸に大量に認められた。 5.小腸内RBTI量は、BとD群共に下部に多量に認められたが、SRIDとACTで比較するとSRIDでの値が大幅に上回った。 6.小腸内容物のHPLC分析から、RBTIはトリプシンと複合体を形成していることが示された。 7.小腸内トリプシン活性は、B、D群では摂食開始後2時間までは上部小腸で低下していた。一方、キモトリプシン活性は、A、C群に比べB、D群で小腸の上中下部いずれにおいても高くなっていた。 8.以上の結果より、RBTI摂取による胃から小腸への内容物移送速度の低下、小腸内におけるトリプシンの阻害、膵液分泌刺激の昂進が示された。なお、胃内でのRBTIの失活が共存する食餌蛋白質により保護される可能性や消化酵素由来の内因性窒素の利用がRBTIにより防げられる可能性も示唆された。今後の展開としては、上記不確定の点を明らかにすることと、RBTI摂取に伴う小腸上皮細胞の挙動や膵液分泌応答の機構を解明し、これらの生体における意義を明らかにすることである。
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