1.混合糸染料の触媒性光退色に及ぼす一重項酸素脱活性化剤の影響について羊毛とナイロン布を用い検討した。その結果羊毛布上ではさほど触媒性光退色は認められなかったが、ナイロン布上で顕著に認めらた。また一重項酸素脱活性化剤の効果についてはDABCOの添加はさほど有効ではなかったが、P-トルエンルホン酸のニッケル塩(NTS)は優れた退色の抑制効果を示した。そのため現在その実用化(水着の耐光性改善)を検討している。 2.さらに優れた耐光性改善剤の開発を目的としてNTS誘導体を合成し、効果を検討した。その結果母体骨格としてはナフタレンよりベンゼン環の方が抑制効果は優れていた。またメチル基や水酸基などの置換基の導入はかえって退色の抑制効果を低下した。ところがニッケルスルホン酸基は導入数を増すにつれて抑制効果も向上した。このような結果よりm-ベンゼンジスルホン酸のニッケル塩など新規な耐光性改善剤を提案。繊維基質中への練り込みによる材料物性の変化を検討中である。 3.新規な一重項酸素脱活性化剤の開発とその適用範囲の拡張を目的として感圧感熱用色素の光退色機構を溶液中で検討した。その結果光退色に及ぼす対イオンの寄与を明らかにした。すなわち染料モデルとしてクリスタルバイオレットラクトン(CVL)を用い検討した。CVLはそれ自身無色であるが酸触媒などでラクトン環を開裂する事により青色に発色する。その際の対イオンとしてはアンモニウムカチオンとラクトン系カルボン酸アニオン部がある。そこでまずカチオン部の対イオンとしてスルホン酸やニ塩基酸などの効果を検討した。その結果対イオンの強度の増大とともに光安定化も向上した。またアニオン部としては長鎖アルキル基を有するカチオンや亜鉛塩が有効であった。またフォトクロミック色素には両性対イオンが有効、現在安定化機構を検討している。
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