1.文書入手について 本年度、新たに入手した資料としては、米国ロスアラモス研究所のものの他に、従来、空白に等しかったフランスのジョリオ・キュリーのグループの関係のものがある。この資料と、すでに一般に公開をされているレオ・シラードの資料を対比することによって、両者の交流が明らかにされた。 また、日本の資料については、今年度、新たにGHQ関係の調査資料の一部を入手した。他の資料についても、とくに米国が戦後に調査したものについては、現在、入手の手続きを進めつつある。 なお、今年度完成予定であったOSRD・ブッシュ、コナント、ファイルのマイクロフィルム化は、出版元の都合で遅れたため、次年度に入手の予定である。 2.研究の状況 上記のフランスの資料の入手により、シラードら米国の科学者との比較研究が可能となり、両者の研究成果の公開に対する態度の相違、特許に関する考え方の違い等が明らかにされた。 また、日本の原爆開発については、軍の戦略的意向との関係で客観的に分析する方向が示され、その視点にもとづいて従来の諸説の見直しが行われた。さらに、理化学研究所における熱拡散法によるウラン濃縮の研究・開発に関して、すでに公開されている米国におけるものと比較・分析が行われた。また、日本における研究開発の主体は、基本的には爆弾ではなく炉であったことも確認された。
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