本年度の研究は、1988年にアメリカ国立公文書館、およびイギリスのパブリック・レコード・オフィスにおいて収集した資料の分析・整理と旧日本軍の生物兵器部隊関係者の面接調査が中心であった。 アメリカおよびイギリスの資料の分析においては、第一に1945年から1950年代の初めまでの、生物兵器研究・開発のプロセスを各生物兵器用病原体毎にフォローし、データ・ベース化を進めている。第二に、生物(一部化学)兵器に関する両国政府の政策の分析を進めている。これについては、この種の兵器の使用に積極的なグループあるいはセクションおよび人物リストの作成を進めている。また、逆にその使用に消極的さらには反対していたグループや人物のリストの作成を行っている。これについてもデータ・ベース化したいと考えている。 旧日本軍の生物兵器部隊関係者の面接調査においては、東京中心に5人の関係者の協力が得られ、面接調査を行うことができた。これら面接によって、旧日本軍における生物兵器研究・開発の雰囲気をある程度知ることができた。また何人かの調査対象者からは、旧日本軍の研究成果が第2次大戦後アメリカに渡ったであろう経路についての示唆を受けた。今後このルートに沿って、旧日本軍の研究・開発と戦争のアメリカでの生物兵器研究・開発のつながりを明らかにしたい。
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