研究概要 |
昨年度の研究において、9〜10歳児であった非活動的児童と活動的児童それぞれ5名が1年間の発育経過後に、昨年度と同じ実験を実施され、姿勢調節に重要な役割を果す抗重力筋がどのように発達しているかを探求した。まず,1)抗重力筋の脊柱起立筋が主動筋となる脊筋伸展運動(脊筋力を測定する姿勢)を、間に十分な休息を取りながら負荷を10kgずつ増加させて5秒間行わせ、僧帽筋・脊柱起立筋・大殿筋・大腿二頭筋・大腿直筋から筋電位(EMG)を双極導出した。EMGは全汲整流され、積分された。その結果、非活動群の脊柱起立筋のm1EMG(単位時間当りのEMGの積分値の平均値)の値は、活動群のそれと比べて10、20、30、40、50kgのいずれの負荷の運動においても有意に低い値(10、20kgの負荷においてはP<0.01、その他の負荷ではP<0.05)を示した。昨年度の結果では、20と30kgの負荷の運動のみに有意差(いずれもP<0.05)を認めているので、1年間の発育の間にその差異が増大した。次いで、2)脊柱起立筋が主動筋とならない自転車エルゴメ-タ-運動を、負荷を150kpm/minずつ漸増させながら20秒間行わせ、同様にEMGを導出し、分折した。その結果、非活動群の脊柱起立筋のm1EMGの値は、活動群のそれと比べて450と600kpm/minの負荷の運動において有意に低い値(それぞれP<0.01)を示した。昨年度の結果では、いずれの負荷の運動においても両群間に有意差が認められていないので,この運動においても1年間の発育の間にその差異が増大した。本研究の結果は,日常身体活動が少ない児童は、脊柱起立筋の発達に劣り、特に最近運動の巧緻性・転倒時の反射姿勢が劣化してきている児童が増加傾向にあることは、彼らの生活が非活動的になってきていることと関係があることを示唆した。
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