本研究の目的は、スポ-ツなどの運動場面においてPeak Performanceを得るための心理的要因を検討することである。そのため対象は弓道、剣道その他の運動選手と、基礎的資料を得るための一般学生とした。方法は脳波(特にα波を中心)、皮膚温、心拍数、性格検査、あがりの状態等を各実験計画に応じて測定し、それらの結果を解析して検討した。主な結論は次の通りである。 1.試合直前と試合中の両場面で実際にあがった状態になる運動選手の性格特徴は、社会的内向、情緒不安定、神経質、不安傾向等である。 2.剣道の試合場面、弓の射的場面、回転板追従動作時における選手や一般学生の心拍数、皮膚温、脳波からみると、交感神経興奮型、交感神経興奮現象と副交感神経興奮現象を同時に示す混合型、さらに少数例ではあるが副交感神経興奮型や一定の傾向を示さない不定型の人がいる。 3.回転板追従動作における高・中・低各パフォ-マンス群の生理心理的状態を検討した結果、パフォ-マンスと密接に関係する優勢脳波は、従来からいわれてきたα波(8〜13Hz)の中の特にα_2波(9〜11Hz)であり、α_1波(7〜9Hz)α_3波(11〜14Hz)はそれほど密接には関係しない。また相対的に皮膚温が低く(交感神経の興奮)、心拍数が少ない(交感神経の抑制)ような心理的状態もパフォ-マンスを高める要因になると考えられる。 4.剣道選手、弓道選手を対象に試合直前、試合中、試合直後の心拍数、皮膚温、脳波(試合直前と直後のみ)を測定し、それらの変化を検討した結果、試合直前に交感神経興奮現象への移行と、その反対の移行現象が、すなわち自律神経系内の興奮の交代現象から副交感神経興奮の交代現象がおこることがわかった。また最も集中力を要する時点で、交感神経興奮型の選手と混合型、その他の型の選手が存在している。
|