〔研究目的・方法〕中等度または軽症肢体不自由者の主たる運動種目は水泳であるが、障害者にとっても容易に実施できるという理由のみで、水泳そのものが障害者にとってどのような影響を及ぼすかは十分には調べられていない。そこで、脳性麻痺、脊損、自閉症など9〜37歳の障害者男女合計14名を対象に、浸水および種々の遊具を用いた水泳運動を約1時間負荷し、運動前、運動中および運動後約1時間にわたって採尿し、Na、K、カテコールアミン、VMAおよびMHPG尿中排泄量を調べた。さらに心拍数(HR)および心電図RR間隔からCVrrも算出した。尚、対照群として健常男児6名(平均10歳)、女児1名(10歳)に同様の実験を行った。 〔結果〕陸上および水中での姿勢変換にともなうHR変化は、健常者では仰臥位、座位、立位の順で高くなり、水中では陸上でのそれに比較し6.9〜10.2%低かった。しかし、障害者では障害の種類、程度によって姿勢変換にともなうHR反応は異なった。アナフィラキシーショック児では水中と陸上ではHR変化に差がなかった。痙直型四肢麻痺児では水中背浮き姿勢では水中立位姿勢時よりHRが上昇した。健常児および他の障害児では水中仰臥位姿勢(背浮き)が最もHRが低く、最もリラックスしていることがわかるが、痙型直型脳性麻痺および筋疾患ではむしろHRが上昇するか、低下しても程度は僅少であった。水泳中のHRは健常者では最高165〜200拍/分まで上昇したが、障害者では固体差が著しく、健常者程の上昇を示した者はみられなかった。尿量は両群共水泳中および直後著増した。60分後は健常者では前値に復したが、障害者ではさらに上昇した。障害者のカテコールアミン、VMAおよびMHPG尿中排泄量の固体差が著しかった。以上の結果は、障害の種類、程度によって生体負担程度が著しく異なることを示している。また、著しい利尿亢進がみられたことから脱水惹起の可能性もあり、水分補給の必要が示唆された。
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