1.ファルネシル二リン酸合成酵素について:a)基質の二リン酸部をメチレンジホスホン酸などに変換した、人工基質同族体を合成し、ファルネシル二リン酸合成酵素の基質としての反応性を詳しく調べ、プレニルトランスフェラ-ゼ反応の基質における二リン酸部の意義を解明した。b)ホモアリル性基質同族体、(E__-)および(Z__-)-3-メチル-3-ペンテニル二リン酸はよい基質となり、前者の反応生成物には(S__-)-4-メチルが、また後者の反応生成物には(R__-)-4-メチルが導入されるが、これらの生成物の光学純度を検定した結果、これらの人工基質による反応においても酵素反応の立体特異性は完全に保持されていることが明らかとなった。 2.ヘキサプレニル二リン酸合成酵素について:2つの必須成分AとBに分離するこの酵素の活性発現に重要なアミノ酸残基はCysとArgであり、これらはいずれも成分B上に存在していることを証明した。さらに、この酵素が活性発現状態にあるのは、基質Mg^<2+>複合体と成分AおよびBが集合して、みかけの分子量50kDaの比較的安定な複合体を形成している状態であることを証明した。 3.ウンデカプレニル二リン酸合成酵素について:人工基質、3-メチル-3-ペンテニル二リン酸の反応生成物は、常にプレニル鎖延長反応が1回のみで終結したものになっていることを明らかにしたが、この酵素反応の速度論的解析から、アリル性基質の4位にメチル基が導入されると、酵素の基質結合部位に正しく結合できなくなることがわかった。 4.植物のポリプレニル二リン酸合成酵素について:クワの葉より、Z__-、E__--混合型のポリプレニル二リン酸合成酵素を抽出、部分精製した。この酵素反応の立体化学を直接的に証明した結果、植物のポリプレノ-ル生合成系では酵素反応の立体化学が動物や微生物の酵素とは反対であると報告されていた論議が誤りである可能性を指摘した。
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