研究概要 |
昭和62年度までに、真性粘菌Physarumpolycephalumの細胞分化の過程で、ポリフェラステロールモノグルコシドが出現することを明らかにし(J.Biol.Chem.26216719-1672387に発表)、更に粘菌細胞の主要ステロール成分の分化に伴う変化を確認した(CellStruct.Funct.12,519-52487に発表)。 63年度は、ポリフェラステロールにグルコースを転移するUDP-グルコース:ポリフェラステロールグルコシルトランスフェラーゼ活性の動態と、その酵素の性質についての検討を行った。その結果、この酵素活性が粘菌のアメーバ期には全く検出されず、アメーバの接合を境に発現して、ポリフェラステロールモノグルコシドの合成を開始することが確かめられた。また、この酵素の性質を調べたところ、分子量は約72000で至適pHは7.0、ポリフェラステロール、シトステロール、カンペステロールが反応のよい基質となり得た。また、ポリフェラステロールのC-24エピマーであるスティグマステロールはよい基質とはならなかった。反応のKm値は、UDP-グルコースに対しては1.2×10^<-4>M、ポリフェラステロールに対しては4.8×10^<-6>Mであった(以上、Biochim.Biophys.Actaに投稿、印刷中)。 また、接合を経ずしてアメーバからプラズモディウムヘと分化する突然変位株(コロニア株)では、アメーバ期に既にUDP-グルコース:ポリフェラステロールグルコシルトランスフェラーゼ活性を発現し、ポリフェラステロールモノグルコシドを合成していることが確かめられた。野性株のアメーバとコロニア株のアメーバとの間には、膜の種々の性質の違いが観察される。 以上の知見を基にして、粘菌をモデル系として用い、細胞の膜におけるステリルグルコシドの役割について、現在、検討を進めている。
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