研究概要 |
昭和63年度までに、真性粘菌Physarum polycephalumのミクソアメ-バから変形体への分化に伴って、ポリフェラステロ-ルモノグルコシドが出現すること(J.Biol.Chem.262、16719)、粘菌細胞の主要ステロ-ル成分が変化すること(Cell Struct Funct,12,519)を明らかにし、更に、ポリフェラステロ-ルにグルコ-スを転移する、UDP-グルコ-ス:ポリフェラステロ-ルグルコシルトランスフェラ-ゼが、分化に伴って発現することを見出した。そして、この酵素を部分精製し、性質について詳しい検討を行った(Biochim.Biophys.Acta 992,412)。 平成元年度は、Physarum polycephalumの突然変異体であるコロニア株を用いて、次のことがらを明らかにした。 コロニア株は、核相の変化なしに、ミクソアメ-バから変形体へと分化する。この株は、野生株と異なって、ミクソアメ-バ期から既にUDP-グルコ-ス:ポリフェラステロ-ルグルコシルトランスフェラ-ゼ活性を有し、ポリフェラステロ-ルモノグルコシドの合成を行っていることが分かった。(第42回細胞生物学会大会で発表)。また、野生株と突然変異株では、D-グルコ-スの取り込み能と膜融合能に大きな差があることが観察された。 膜の機能におけるステロ-ルグルコシドの役割を明らかにするため、共に膜を構成しているリン脂質の動態を調べた。その結果、膜のリン脂質とその分解酵素が、細胞分化に伴って著しく変化することが分かった。この変化は、野生株とコロニア株でほとんど同様であった。(Biochim.Biophys,Acta,印刷中)。現在、これらの成分を大量に分離・精製する方法を開発し、純粋な系での解析を行うための準備をしている。
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