1.新規ポリアミン合成酵素阻害剤メチルグリオキザールビス(シクロペンチルアミジノヒドラゾン)(MGBCP)を化学合成した。 2.ポリアミン合成系各段階酵素に対する阻害効果を調べた。MGBCPはアデノシルメチオニン脱炭酸酵素、スペルミン合成酵素、スペルミジン合成酵素の三者を阻害したが、オルニチン脱炭酸酵素に対しては全く阻害作用を示さなかった。MGBCPによる阻害様式はすべて基質に対する拮抗阻害であった。 3.ヒト赤白血病由来の細胞株K562、ヒトリンパ性白血病由来の細胞株Molt4B細胞およびP388白血病細胞の増殖におよぼすMGBCPの影響を調べた。いずれの細胞も10μMの低濃度で増殖の阻害がみられ、50μMで約50%増殖が阻害された。100μMでほぼ完全に増殖が阻害された。 4.Lewis肺癌細胞の大腿部から肺への転移におよぼすMGBCPの影響を調べた。MGBCP投与群のマウスは対照群のマウスに比べ30%程転移が抑制された。 5.MGBCPが癌細胞内のポリアミン動態および物質代謝に如何なる作用をおよぼしているかを究明した。細胞内スペルミジンとスペルミン量が顕著に減少し、蛋白合成能が著るしく低下していた。 6.これらの結果から、MGBCPによって癌細胞内ポリアミン合成が阻害され、スペルミジンおよびスペルミン量が低下したことによる蛋白合成阻害がおこり癌細胞の増殖を抑制したものと考えている。 7.研究成果をとりまとめ、学会に発表し、また外国の学術雑誌に五編発表した。中でも印刷中のCancer Researchは癌関係の一流専門誌であり、この雑誌に掲載が認められたことはこの研究が与えるインパクトは大きいものがある。
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