種々の癌細胞においてポリアミン(スペルミジンとスペルミン)の合成量が高いことから、癌の治療法としTポリアミン生合成の阻害が考えられ、抗腫瘍剤のタ-ゲットとしてポリアミン生合成過程が注目されるようになってきた。これまでに開発されたポリアミン生合成阻害剤によって癌細胞内ポリアミン量が低下すると癌細胞の増殖が抑えられることがわかった。その中、メチルグリオキサ-ルビス(グアニルヒドラゾン)(MGBG)ハポリアミン生合成に関与する酵素の1つであるアデノシルメチオニンデカルボキシラ-ゼの阻害剤であり、スペルミジン合成酵素とスペルミン合成酵素の基質としてのデカルボキシアデノシルメチオニンを低下させる作用のある薬剤である。しかしながら、このMGBGは、副作用としてミトコンドリアに対する毒性があるため臨床応用にまではいたらなかった。そこで、私達は癌細胞内のスペルジミンとスペルミンの両ポリアミンをより有効に減少させるために、ポリアミンの生合成に関与する複数の酸素を同時に阻害する化合物メチルグリオキザ-ルビス(シクロペンチルアミジノヒドラゾン)を合成した。この化合物を培養白血病細胞の培地に添加することによってポリアミン量が減少し、白血病細胞内蛋白合成が著しく制御され、白血病細胞の増殖が強く抑えられた。また、P388白血病細胞を移植したマウスに対してもかなりの延命効果がみられたので、この薬剤は癌治療薬として有望であると思われる。
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