生体内で合成される酸化型飽和および不飽和脂肪酸(ヒドロキシ体、エポキシ体など)が種々の生理・病理作用をもつことが発見され、脂肪酸誘導体の新しい役割が注目されている。申請者もスンクス(Suncus murinus、新しい実験動物として注目されている)の腎臓ミクロソーム(Ms)の酵素系が脂肪酸の水酸化を特異的に行うことをみいだし、本研究において酸化型脂肪酸の生合成経路と生理活性を検索した。 1.補酵素および阻害剤を用いた実験により腎Msにおけるヒドロキシ脂肪酸の生合成にはシトクロムPー450(Pー450)およびNADPH-P-450レダクターゼが関与していることが明らかとなった。 2.腎Msを可溶化し、アミノオクチルセファロースカラムクロマトグラフィーによりPー450を部分精製した。FPLCにより更に精製を試みたところ4種類のPー450が含まれることが判明したが、FPLCのカラムが小さいことおよびFPLCによって単離されたPー450が不安定であることから、各Pー450の諸性質を調べる十分量のPー450が得られなかった。今後大きな分取用カラムを用いて4種類のPー450を単離し物理化学的性質を調べる計画である。 3.Pー450の精製標品を得ることが現状では困難なので、腎Msを用いて脂肪酸の水酸化反応の基質特異性を調べた。飽和脂肪酸の中ではラウリン酸(C_<12:0>)が最も活性が高く67.3nmol/nmol Pー450/min)、活性の順序はC_<12>>C_<10>>C_<14>>C_<13>>C_<16>>C_8>C_<18>であった。 不飽和脂肪酸であるC_<18:1>、C_<18:2>、C_<18:3>も基質となりC_<18:0>より活性が高かった。すべての基質において生成物はωおよび(ω-1)ヒドロキシ体であり、不飽和脂肪酸の場合エポキシ体は生成しなかった。 4.C_<12:0>およびC_<14:0>のヒドロキシ体の生理活性(血小板凝集活性)を調べたところ低い活性がみられた。今後他の生理活性を調べる予定である。
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