研究課題/領域番号 |
63580137
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研究機関 | (財)東京都臨床医学総合研究所 |
研究代表者 |
秋田 朗子 東京都臨床医学総合研究所, 遺伝情報研究部門, 研究員 (40124432)
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研究分担者 |
大野 茂男 東京都臨床医学総合研究所, 遺伝情報研究部門, 研究員 (10142027)
矢島 由紀子 東京都臨床医学総合研究所, 腫瘍細胞研究部門, 主任研究員 (60090114)
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キーワード | プロテインキナーゼC / ホルボールエステル受容体 / 細胞内情報伝達 / カルシウムイオン / リン脂質 / ジアシルグリセロール / ホルボールエメテル / セリン・スレオニンリン酸化酵素 |
研究概要 |
プロテインキナーゼC(PKC)は、種々の細胞の情報伝達系で中心的役割を果たす蛋白質リン酸化酵素である。既に我々は、PKCが少なくとも4種類(α、βI、βII、γ)存在することを明らかにし、これらの全構造を決定した。今年度は更に新たなPKC関連分子種、nPKCεの一次構造を推定し、この蛋白質が組織特異的に発現していることを明らかにした。新たに見出したnPKCεを含めた5種類の分子種はいずれもホルボールエステル受容体として機能し、また、リン脂質存在下でジアシルグリセロールやホルボールエステルによって刺激される。しかし、従来の4種のPKC分子種の活性がCa^<2+>によって制御されていることとは対照的に、nPKCεの酵素活性およびホルボールエステル結合活性はCa^<2+>に依存しない。4種のPKCに保存されているC1、C2、C3領域のうち、nPKCεはC2を欠くことから、C2領域がPKCのCa^<2+>感受性に関与していることを示唆する。nPKCεの酵素学的特性はCa^<2+>非依存性の他に、リン脂質特異性、基質特異性において従来のPKCとは異なり、ヒストンを基質とする測定方法ではその活性は低い。そこで、特異的抗体によって検出しながら分離精製を試みたところ、脳標品のTypeIIにほぼ一致してhydroxapatiteカラムから溶出した。TypeIIの酵素活性はCa^<2+>依存性が低いことが報告されているが、この標品中にβI、βII以外にnPKCεも含まれている可能性がある。 これらの新たな知見は、ホルボールエステルやジアシルグリセロールによって刺激される種々の細胞の応答反応にはCa^<2+>に依存的な従来のPKCを介する系路とは明らかに異なるCa^<2+>非依存性のnPKCεを介する系路も存在することを意味している。多様な応答系路に、いずれのPKC関連分子種が関与しているか検討をするために、細胞内に存在する分子種を抗体を用いて同定しているところである。
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