レチノイン酸による発生初期の神経系に特異的に発現するガングリオシドの調節機構を調べる目的で、ニワトリ初期胚よりレチノイン酸に特異的に結合する蛋白を単離し解析をおこなった。 (I)ニワトリ初期胚には、二種類の細胞内レチノイン酸結合蛋白、タイプIとIIが存在していた。HPLCを用いて、この二種類のタンパクを精製し、N端アミノ酸配列を決定した。 (II)タイプI、IIに対する特異抗体を作製し、イムノブロットを用いて調べた結果、タイプIは外胚葉ー神経系に、タイプIIは中胚葉由来の筋ー骨系に特異的に存在していた。 (III)タイプIは、胎児期中枢神経系の神経芽細胞に一過性に発現し、神経系形成と深く関連していることが判明した。 (IV)ニワトリ初期胚中枢神経系のcDNAライブラリ-を作成し、タイプIのN端アミノ酸配列より予想されるDNA配列を合成し、プロ-ブとして、タイプICRABPの遺伝子を分離することができた。 更に、CRABPよりレチノイン酸を受容する核内レチノイン酸受容体の存在を、ニワトリ初期胚で明らかにするために、受容体遺伝子より推定されるアミノ酸配列(154ー178)を合成し、レチノイン酸受容体に対する抗体を作成した。この抗体をもちいて、組織染色、イムノブロットで調べたところ、レチノイン酸受容体は分子量45KDaであり、二量体として95KDaの分子量をもって存在することが判明した。
|