遺伝子の転写活性にかかわるクロマチン構造が複製のさいどのうよな機構で保持されるのかが本研究の目的である。その第一歩としてラットアルドラーゼB遺伝子をとり上げ、転写が活性化されている細胞とそうでない細胞とで複製の方向が異なるかを調べている。 本遺伝子の転写がほとんどないラット肝癌細胞dRLh84を低血清培地、アフィディコリン処理あるいはチミジン処理によってS期前半に休止させた。休止解除後、一定時間ごとにアルカリ蔗糖密度勾遠心法およびBrdU標識法により新生短鎖DNAを得た。これらの複製された領域に由来するDNAをサザン法でいくつかのアルドラーゼB遺伝子断片とハイブリダイズさせたところ、休止解除後初期にアルドラーゼB遺伝子の5'上流のDNAとハイブリダイズするバンドが現れ、時間が経るにつれ3'下流のDNA断片とハイブリダイズするDNAが増加した。このような解析からdRlh84細胞での本遺伝子の複製は、5'→3'の方向(転写方向と同じ)に進むことが予想された。さらに、アルドラーゼB遺伝子の5'側上流や遺伝子内部のDNA断片等を用いたハイブリダイゼーション実験から、複製の開始点が本遺伝子の5'近傍にある可能性が示唆された。ここで用いた細胞は本遺伝子の転写がほぼ完全に抑制された細胞である。転写が不活化された細胞では本遺伝子の細胞特異的発現に関与する調節領域近傍に複製開始点があると考えるのは大変興味深い。今後、転写が活発におこっている細胞における複製の方向および複製開始点の位置を解析し、上記の結果と比較したいと考えている。
|