FRTL-5甲状腺細胞にATPを作用させるとホスホリパーゼCの活性化にはじまるCa^<2+>動員、I^-放出反応などの一連の応答(C系)促進が観察される。このC系の活性化は非水解性のATP誘導体およびADPでも観察されるが、ADP、アデノシンは無効であった。したがってP_2-タイプのプリン受容体を介していると考えられる。一方、ATPなどはCAMP生成(A系)抑制もひきおこす。このC系促進、A系抑制に対する各種ATP誘導体の効果を比較したところ、その親和性の順位は、C系、A系で異なっていた。すなわちATPによるC系促進、A系抑制は異なった受容体サブクラスを介していることが示唆される。次にATPによるC系促進、A系抑制作用に対する百日咳毒素(IAP)効果を調べた。IAPは抑制性GTP結合蛋白質(Gi)およびGi様蛋白質をADP-リボシル化し、その機能を消失させることが知られている。ATPによるA系抑制はIAPで完全に解除されるのに対し、C系促進作用は完全には解除されなかった。この時、IAPはGi(およびGi様蛋白質)を完全にADP-リボシル化していた。以上の結果、ATPはP_2プリン受容体を介してC系促進、A系抑制をひきおこすこと、A系抑制はGiを介しているのに対し、C系促進作用はIAP感受性の点で異なる少なくとも2種のトランスデューサー機構を介していることが明らかにされた。
|