現在、数種のS-アデノシルメチオニチン(AdoMet)依存性メチル基転移酵素についてその一次構造が知られているが、これらの酵素にはアミノ酸配列上、相同性を示す部分が存在せず、特定の高次構造がAdoMet結合ドメインを形成することが示唆される。本研究において、AdoMet結合部位の構造解析の第一歩として、AdoMetの構造類似体とみなされる試薬を用いて、グリシンメチルトランスフェラーゼ(GMT)、グアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ(GAMT)について、アフィニティ試薬としての有効性を検討した。1.GMT-GMTは5'-p-フルオロスルフォニールベンゾィルアデノシン(FSBA)との反応によって、サブユニット当たり、4Tyr残基が修飾される。このうち1残基の修飾が酵素を失活せさる。失活酵素をプロティーゼで消化し、ペプチド分析を行った結果、ESBAは複数のTyr残基を互に排除的に修飾し、酵素を失活させるが、主としてTyr-177が修飾されることが明らかとなった。8-アジドAdoMet、(N_3AdoMet)、AdoMetの 2'3'-ジアルデヒド誘導体(AdoMet)はGMTに対して顕著な反応性を示さなかった。 2.GAMT-ESBAはGAMTを速やかに失活させるが、この失活はCys 残基の修飾による、5'5'-ジケオビス(Z-ニトロ安息香酸)を用いた実験より、GAMTは極めて反応性に富む2Cys残基(Cys-15、Cys90)を有し、これらは立体構造上近傍に存在し、容易にジスルフィド架橋されること、架橋によって大部分の酵素活性が失われることがわかった。しかしながら、失活が基質によって保護されないことから、これらの残基は活性中心外に存在するものとおもわれる。N_3AdoMetもこれらのSH基と速やかに反応するため、アフィニティ試薬としての有効性を知ることができなかった。OAdoMetはGAMTに対して無効であった。
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