1.申請者はウサギ血小板に膜結合性ホスホリパーゼA_2活性を阻害する因子を見つけているが、本研究は血小板凝集時に認められるホスホリパーゼA_2活性発現機構に本阻害因子がどのように係っているのか解明しようとするものである。この阻害因子を精製するにあたり、多量の血小板を必要とすることからウシ血小板にこの因子が存在するか否か検討した。ウシ血小板の可溶性画分にもまた膜ホスホリパーゼA_2を阻害する蛋白質が存在することを確認し、硫安分画、疎水性カラム担体、Q-セファロース、FPLC用モノQカラム、HPLC用ハイドロキシアパタイトカラム、本年度購入のHeliRacフランクションコレクターを用いて分画し、精製を進めている。同時に血小板活性化因子(PAF)で刺激した血小板に認められる膜リン脂質からのアラキドン酸の遊離がSH基修飾試薬(酸化フェニル砒素)により抑制されることを明らかにしており、ダンシル基で標識した酸化フェニル砒素を血小板に作用させ、膜のホスホリパーゼA_2活性化に係る因子の標識化およびその因子の同定を進めている。 2.申請者は水浸拘束ストレスを負荷したラット胃組織、特に幽門前庭部で、炎症のメディエーターとして注目されているPAF量が潰瘍形成とともに著しく変動することを明らかにした。このPAFの生合成にホスホリパーゼA_2が重要な働きをしていること、またホスホリパーゼA_2の一種でもあるアセチルハイドロラーゼがPAFの不活性因子として注目されており、水浸拘束負荷ラットの胃の潰瘍形成と平行して血清PAFアセチルハイドロラーゼ活性の上昇を認めていることなどPAFの生体組織内の量的変動にこれら2種の酵素がどのように係っているのか検討中である。
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