今年度は放射線誘発の細胞癌化能に対するプロティンキナ-ゼC(PKC)活性阻害剤、1-(5-isoquinolinsulfonyl)-2-methylpiperazine;H-7、の作用をinvitroマウス細胞C3H10T1/2のトランスフォ-メ-ション検出系を用いて検討した。そしてPKC阻害剤および活性化剤処理時の実際の細胞内PKC活性をモノクロ-ナル抗体法を用いて測定することを目的とした。放射線400rad照射直後に10μg/mlH-7を添加し、同存在下で6週間の培養後にみられるトランスフォ-メ-ション頻度はH-7無添加の場合(20×10^<-4>)に比較して顕著に減少した(約4%)。この濃度のH-7はわずかではあるが、C3H10T1/2細胞の増殖およびコロニ-形成率に対する阻害効果がみられる。しかし、これらの効果がみられない5μg/mlH-7濃度でもトランスフォ-メ-ション頻度は減少する(約30%)ので、H-7の作用機序はトランスフォ-ムした細胞増殖の阻害だけでなく、細胞癌化の初期過程にも作用していると考えられる。前年度のPKC活性化剤を用いた実験では、TPA(発癌プロモ-タ-)では放射線誘発トランスフォ-メ-ション頻度の増加、α-スロンビンでは不変、ジアシルグリセロ-ルでは減少のそれぞれ異った結果が得られた。これは細胞内PKC活性化能およびH-7の場合の阻害能の違い、あるいは知られている3種類のPKCアイソザイムType I(γ)、II(β)、III(α)の違いによると思われる。そこでウサギ脳より精製したPKCをBALB/Cマウスに免疫後、その脾細胞とマウスミエロ-マ細胞とを融合させて得られたクロ-ンからのそれぞれアイソザイム特異的なモノクロ-ナル抗体を用いて、細胞内PKCの測定が現在進行中である。
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