哺乳動物個体における突然変異を能率よく検出し、それを分子レベルで解析するために、DNA塩基配列・機能ともに既知の外来遺伝子をマウスゲノムに組込み、このマウスを、作用機作が明らかにされている種々の変異原で処理して、組込まれた既知外来遺伝子中に誘発された変化を、分子レベルで解析するという実験系の開発を目指した。このような高精度のDNA分析には、動物個体内で生じたゲノムDNAの変化を性格に検出・定量する系が必要であるので、ラムダファージの試験管内パッケージングシステムを応用してファージに生じた変化を塩基配列レベルで解析することとした。 ベクターとしてラムダファージEMBL3/4を用い、これに大腸菌のsupF遺伝子を組込み、多数の組換えDNAを作製した。supF遺伝子はその塩基配列が明らかにされており、またマウスでは発現しないので、マルチコピーとなってもマウスの個体発生には殆ど影響を与えないと考えられる。さらに以降のDNAシークエンス解析を容易ならしめるために、supF遺伝子は予めプラスミドpBR322に組み込んだ。数多くのラムダ組換え体のなかから、試験管内におけるパッケージングの効率、supF遺伝子の安定性等の諸性質について検討を加え、マウスに導入する複数の候補クローンを選択した。それらのうちの1つを、マウス受精卵に注入し、トランスジェニックマウスを作成する事を試みているが、未だ、ラムダファージゲノムを組み込んだ個体を得るにいたっていないので、注入実験を継続している。
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