1.ジルコニウム(Zr)-ジブチル燐酸(HDBP)系は第三相形成の原因の一つであり、DBP/Zrモル比2.5において沈澱生成量は最大となる。しかし、DBP/Zrモル比の増加と共に生成沈澱生成量は次第に減少し、モル比10以上になると沈澱の再溶解現象がみられる。これに反しZr-モノブチル燐酸(H_2MBP)系ではこのような再溶解現象はみられない。 2.Zr-H_2MBP系の沈澱あるいはエマルジョン生成は、Zr-HDBP系よりも一桁低濃度で起り、さらにH_2MBPとHDBPが共存する場合には協力現象がみられる。 3.H_2MBPは水溶性であり、水相中に生じた沈澱あるいはエマルジョンはTBPの添加により直ちに有機相に移行する。 4.Zr-H_2MBP系沈澱にはZr(MBP)_2、Zr(MBP)_2・0.5H_2MBPおよびZr(MBP)_2・H_2MBPの3種が存在する。NO_3-イオンは含まれない。 5.上記3種の沈澱についてのX線回析パターンは同じで、16〓の層間距離をもった層状構造が基本となっている。 6.筑波高エネルギー研究所の放射光によるEXAFSスペクトルの解析結果ならびに元素分析、赤外吸収スペクトル、X線回析パターン等の結果を考慮すると次のようになる。燐酸で架橋されたZrが二次元的に広がった面が層状構造をとり、その層間距離16〓は、このZr面から垂直に伸びたブチル基が上下の面から互に向い合っているものとすると、ブチル基の鎖の長さの約2倍が層間距離となり、今回のZr-H_2MBP系の沈澱の基本構造をうまく説明できる。
|