原子炉の安全性のためには、種々の事故原因に対して炉出力、冷却材温度、及び燃料温度等の時間変化を調べる必要があるが、その際に反応度係数が重要な役割を果たす。本研究は、空間依存動特性コ-ドを用い、反応度係数の過渡特性への影響について基礎研究を行ったものである。 まず、反応度係数を計算する際に重要となる実効群定数作成法について検討した。実効群定数作成では、共鳴エネルギ-領域の取り扱いが難しく、詳細な核計算には自己遮蔽効果の正確な計算が不可決となるので、自己遮蔽因子法に比べてその精度が高いマルチバンド法を非均質格子に導入する方法を開発した。また、この方法を京都大学原子炉実験所の臨界集合体KUCAで行った稠密格子実験に適用し、その妥当性について従来の方法及びモンテカルロ法と比較検討した。 次に、反応度係数が炉心特性にどう影響するかを調べるため、空間依存の過渡特性解析法について研究した。大型炉では中性子の核的結合が弱いため、局所的反応度の印加により中性子束分布に強い歪みが生じ、3次元解析法の導出が必要となる。時間依存の中性子拡散方程式の中性子流を精度良く表す式を導入し、粗メッシュながら計算精度の良い過渡特性解析法を開発した。この方法を高速炉に適用し、ドップラ-反応度、冷却材温度係数を考え、過渡時の出力分布、ナトリウム温度分布に対する粗メッシュ効果を評価した。 また、本研究の遂行に当たり、今後必要と思われた研究項目をまとめた。
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