研究概要 |
本年度は、事務所機能の都心部における集積状況を明らかにし、その集積立地のメカニズムを解明すること第1の課題として研究を進めた。具体的には、名古屋市都心部を対象として事務所統計調査の結果を用い、3,000社近くの事業所の分布パタ-ンを明らかにした。その結果、都心部には錦・栄と名古屋駅前という二つの核心(コア)部分があり、両者に挟まれるかたちでサブ・コア部分が存在する。さらに、それらの周辺を不完全ではあるが同心円的に取り囲むフレ-ム部分が存在する。こうした分布構造を事務所の種類や形態を通して見ると、卸売業・金融業・各種サ-ビス業が核心部分を占めており、しかも支社形態をとるものがかなりの割合を占めている。こうした事実は、名古屋市を中心とする東海地域を主な営業範囲とするメ-カ-、銀行、事務所サ-ビス業などが、その近接性を求めて都心中心部を指向した結果と推定される。 本年度の第2番目の成果は、これも名古屋市を対象として行った、産業構造の高度化にともなう事業所の地域的分布のパタ-ン変化の把握である。これは、第2次産業が相対的に衰退する一方で、第3次産業をはじめとする事業所が市内一円に立地展開する過程を明らかにしたものである。とくに、事務所・営業所の立地については、それが単に第3次産業にとどまることなく、あらゆる産業全体にわたって増加の傾向にあることを指摘し、都市内部における事業所立地パタ-ンに大きな変化が生じていることを明らかにした。立地のメカニズムとの関係でいうなら、事務所・営業所機能は中心的立地を指向しながらも、その数の多さから、全体としては分散的に配置しつつあることが指摘でき、簡単なモデル化は困難である。第1と第2の成果は、それぞれ学会誌に掲載された。今後は、本年度に十分完成を見なかった事務所機能の立地モデルの構築に向けてさらに努力を重ねていいきたい。
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