1.本研究は、事務所機能の立地に関する理論的・実証的研究であるが、本年度は主として事務所機能立地の理論的側面について研究を行った。すなわち、事務所機能の立地を理論的に説明しようというモデルはこれまでにも散見されるが、それらは部分的モデルの域をでるものではなかった。それゆえ、本年度は事務所立地に関する既存のモデルの問題点を整理し、それらを克服すべき方向について検討を加えた。事務所機能の立地を総合的かつ完璧に説明できるモデルはもともと存在しないかもしれないが、できるだけそれに近づくような努力を行った。 2.モデルの構築にさいしては、都市間と都市内の2つの空間的レベルを想定し、その両方について考えられるモデルの構築を試みた。まずはじめに、都市間レベルにおいては、都市システムの発展過程という側面を考慮し、地方都市にある製造業企業が成長・発展する過程で事業所の複合化や部門の分離化を行う状況をモデル化して示した。一方、都市内レベルにおいては、想定される中心地システムの中で近接性をもっとも高める地点を求めることにより、事務所機能の理論的に望ましい立地点を見出すモデルをつくった。 3.このようにして構築したモデルは、事務所機能が経済の発展段階に応じて現れてくるという現実を踏まえていること、都市内部で実際に集積している事務所の分布パタ-ンと理論的パタ-ンの間に共通点があること、などの面からかなり適合するモデルといえる。今後はこうしたモデルの情級化をさらに進め、より妥当なものへと改良していく必要がある。
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