一般に、小売店の立地決定は、都市とその都市内の立地点の二つのレベルの選定より成り立っている。本研究で考察する立地決定は後者であり、それに係わる立地因子にはさらに、企業の内部因子と外部因子とに分けられる。本研究では、研究視点をしぼるため、外部立地因子のみを取りあげた。外部因子には、その形態から、点、線、面、曲面の4種類に分類される。点とは競争商店や駅、線とは交通路や河川、面は土地利用、曲面は人口分布や地代などである。従来の小売立地モデルでは、何をどんな形式で組み込むかによって、モデルの特徴が生まれる。たとえば、立地-配分モデルでは、外部因子として人口分布を取りあげているが、それは点として処理されている。 本研究の一番大きな特徴は、曲面で分布している外部因子をベーシック・スプライン曲面で3次元的に表現し、立地モデルに組み込む点にある。具体的には、小売店経営の収入を表す人口分布と、費用を表す地代分布をスプライン曲面で表現し、これら二つの曲面から、潜在的立地機会面(一種の収益面)を導出した。最大勾配方を用いて、この立地機会面上の最高点を順次空間的に探索し、小売センター(中心地)の立地点とした。このようにして構築されたモデルは、空間的探索-立地モデルとよばれ、立地空間のみならず需要空間において連続的である点に特徴がある。 空間的探索-立地モデルは、愛知県岡崎市に応用され、小売センターの空間的立地パターンが予測された。実際のパターンと予測パターンの平均偏差距離は、1.01kmと短かく、モデルが現実をよく説明できることが判明した。今後の課題としては、住宅地から発生する消費のみならず、駅や道路における交通流から発生する消費をもモデル内に組み込むことが必要であろう。
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