1.日本における沖積層上部砂層およびその相当層の発達状態の把握 これまで行われてきた数多くの研究成果等にもとづいて、沖積層上部砂層の分布状態(深度・層厚・分布範囲)、層相、年代などの諸特性の概観をおこなった。その結果、沖積層上部砂層の存否や層厚は、地域差が大きいものの、平野の規模、平野を流れる河川の大小とはあまり明瞭な関係がみられないこと、また、上部砂層が二層に分かれ、堆積物の粒度に違いのみられる場合があること、あるいは、二層の間にシルト又は粘土層が挾在される場合があることなどが明らかになった。また、上部砂層の年代についてみると、一般的に、上流側(内陸側)ほど古く、下流側(海側)ほど新しくなる傾向がみられ、繩文海進に伴って拡大した内湾の堆積の進行に伴って上部砂層の堆積が進行したことが確認される。 2.事例調査地域における沖積平野の地形・地質、上部砂層の分布状態の把握 調査地域として、沖積層上部砂層の発達が極めて良好で、日本における沖積平野地形・沖積層の模式地的な性格をもつ濃尾平野と、その比較対象地域として、上部砂層の発達があまり顕著でない石狩平野、発達の顕著な関東平野(多摩川低地)、潮差の大きな湾に向けて平野のひろがる筑紫平野、さらに参考地域として、新潟平野、松山平野、津軽平野等をとりあげ、それぞれの調査地域について、ボーリング資料(柱状図、コアサンプル)等の収集を進め、また、空中写真判読等にもとづいて平野の地形の特徴を把握している。さらに、現地調査によって、地形・沖積層の観察を進め、年代測定試料の採取に努めた。現地調査によって得られた試料のうちいくつかは、現在、^<14>C年代測定を依頼中であり、また、堆積物の堆積環境を明らかにするため、珪藻分析をおこなっている。
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