本研究は、沖積平野を構成する沖積層の上部に特徴的に発達する沖積層上部砂層について、その特質・形成を沖積平野の地形発達史の中に位置づけて考察・検討しようとするものである。 平成元年度においては、調査地域として検討を続けている濃尾平野・多摩川低地・石狩平野・新潟平野において現地調査をおこなうとともに、調査地域における沖積層上部砂層の分布・発達状態を検討した。 このうち、濃尾平野に関しては、とくに沖積層上部砂層の堆積と密接な関係をもつ完新世後半の海面変化について詳しく検討し、「縄文中期の小海退」の存在を認め、それをはさむ海進期、また縄文時代後期から弥生時代にかけての縄文時代晩期を中心とする海退期の存在を確認した。さらに、平野の縁辺部と中(南)部とにおける上部砂層の年代についても検討し、連続した上部砂層であるにもかかわらず、地域(地点)によってその年代に1000年オ-ダ-の違いのあることを確認した。一方、多摩川下流低地については、ボ-リング資料などの基本的な資料を収集して上部砂層の分布状態や層序などに関する検討を進め、上部砂層の発達は良好であるものの、濃尾平野に比べて上部砂層下面の深度が浅いこと、また、その層厚が薄いことなどの点を確認した。さらに、新潟平野や石狩平野においては、上部砂層の発達がきわめて不十分であるが、これらの地域における泥炭層の堆積(泥炭地の形成)とのかかわりのもとに、地形形成史を検討しつつあり、上部砂層の発達が十分でないということをひきおこす条件の解明を試みている。
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