研究概要 |
伊豆諸島のなかで八丈島東山(三原山)における降下テフラ層序と遺跡の立地の調査を行い、姶良Tn火山灰(AT:町田・荒井、1976)と鬼界アカホヤ火山灰(KーAh:町田・新井、1978)を発見した。これらの広域テフラを鍵層にすることによって明らかになったことを以下にのべる。 1.ATは1985年8月、町田洋氏(都立大)と調査を行った際に、末吉の北(あかん田)で初めて発見され、その後、石積ケ鼻や登竜峠の西などでも認められた。東山火山東麓では、ATが軽石流堆積物(末吉軽石流)直下の軽石層に狭在する。これら一連の軽石質堆積物は現在の成層火山(西・東白雲山、東台子山、三原山)が形成される以前の古期カルデラから噴出したものと考えられる。この古期カルデラは、一色(1959)の考えたものより大きく、その直径は4〜6kmに及ぶ。また古期カルデラの形成は、姶良カルデラの噴火と極く近い時期と推定でき、AT直上の軽石流堆積物中の木炭の^<14>C年代値は24,400±430y-B-P(H-5132)、21,600±320y-BP(H-5133)であった。 2.東山火山南麓の湯浜遺跡は、日本では類例がない縄文時代の無文土器を出土することで知られている。ここでのテフラ層序は、上位からI〜XII層に層序区分されていて、K-Ahは、VIII層の、この無文土器を含む褐色風化火山灰層中から検出された。したがって湯浜遺跡は縄文時代早期終末期に位置づけられる。 3.東山火山の地形発達は、〔第1期〕古期成層火山の形成、〔第2期〕古期カルデラの形成と降下軽石流の噴出、〔第3期〕新期成層火山(西-東白雲山、東台子山)の形成、〔第4期〕新期カルデラと三原山の形成、〔第5期〕山頂小カルデラと中央火口丘の形成からなる。なお西山火山(八丈富士)が活動を開始したのは、約1万年前に遡る。
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