研究概要 |
Tm-1遺伝子を持つトマトでも増殖可能となったトマト系TMV(タバコモザイクウイルス)Lta1の解析を行なった。 1.Lta1とその親株であるLの全塩基配列を決定し,比較した。全部で5ヶ所に違いがあったが,そのうちの2ヶ所の塩基置換が,アミノ酸置換を伴うものであった。それらは,複製に関与する130K及び180KタンパクのGlm(979)→GluとHis(984)→Tryであった。 2.試験管内転写系を用いて,上記変異を野性型ウイルスに導入した。両変異ともに導入されたウイルスT1は,Lta1と同じ性質を示した。後者の変異のみを導入して得たウイルスT3も,増殖量と病徴の発現に関してはLta1とほぼ同じであった。前者の変異が導入されたT2は,極少量増殖したが,病気は引き起こさなかった。子孫ウイルスを分析した結果,T2及びT3を接種した植物からは,さらに変異を持つウイルスが検出された。T1及びLta1を接種した場合は,接種したウイルスと同じもののみが回収された。このことから,Tm-1抵抗性を克服するには,2ヶ所の変異を両方持つことが必要であると結論された。 3.独立に得た2種の変異株,CH3とL_<11>Y2B7についても解析した。その結果,上記の2ヶ所の変異が見出され,この変異がかなり普遍的に見られるものであることが明らかとなった。 4.2ヶ所の変異及びT2,T3の子孫ウイルスに見出された変異はすべて電荷の減少を伴うものであった。従って,抵抗性反応,あるいは,抵抗性を克服するメカニズムに静電的相互作用が関与することが示唆される。プロトプラストでの実験も,複製における阻害を示している。 引き続き,抵抗性反応そのものにせまる実験を行なうとともに,Tm-2抵抗性を克服するようになったウイルスLtb1の解析を行っている。
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