ヒト染色体のセントロメア領域の構造と機能を明らかにするために、セントロメア領域を長いDNA断片としてクロ-ン化することを主な方針として研究を進めてきた。長い断片のクロ-ニングはまだ進行中であるが、セントロメア領域におけるDNA-蛋白質相互作用など、新たな知見が得られたことを以下に述べる。 1.セントロメア領域のクロ-ニング:ヒト染色体のセントロメア領域には、基本単位が170bpのアルフォイド反復配列が数百-数千kbにわたって存在している。これらを制限控訴BglIIによって約200kbの断片とし、より細かい他のDNA断片からショ糖密度勾配遠心法により分離、濃縮することができた。この長いDNA断片を酵母にクロ-ニングし、さらにその生物活性を検出することを念頭において、pYACプラスミドにHygromycine耐性遺伝子と、DNA複製に必要なARS(Autonomously Replicating Sequences)を組み込んだ誘導株を作成した。これらの改良したベクタ-に長いDNA断片を挿入し酵母に形質導入した後、Pulse-fieldゲル電気泳動法とSouthern Hybridization法を用いて、アルフォイド配列を持つクロ-ンを検索中である。 2.セントロメア領域でのDNA-蛋白質相互作用:染色体のセントロメア部位に存在する分子量80kDのCENP-B蛋白がアルフォイド配列中の17bpの特異的配列に直接結合することを、セントロメア抗原を認識する自己免疫患者血清中のセントロメア抗体を用いてのImmunoprecipitation法、及びgel-shift法により示した。現在までクロ-ン化されたアルフォイド配列の解析により、この17bp配列(CENP-B box)がY染色体を除くすべての染色体のセントロメア領域に見出されることから、このCENP-B蛋白とCENP-B boxの結合反応がセントロメア機能において何らかの役割を担うものと示唆された。
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