研究概要 |
大腸菌FプラスミドのDNA複製開始頻度はイニシエ-タ-蛋白質(RepE)の質的・量的変化によって調節されていると考えられる。RepEの調節におけるσ^<32>因子の果している役割を明らかにするために、σ^<32>を持たないrpoH欠失変異株で増殖出来るようになった変異ミニFの分離と解析を行った。平成元年度研究実施計画に基づき現状をまとめた。1.repE遺伝子のプロモ-タ-領域の変異ミニFは充分量のプラスミドDNAが得られず分離出来なかった。2.プロモ-タ-領域のsite-directed mutagenesisは実験中である。3.repEのN末端から上流、oriII領域を含むフラグメントをプロモ-タ-クロ-ニングベクタ-につなぎ、両方向からの欠失株を分離し、β-ガラクトシダ-ゼの活性としてモニタ-し、調べた。majorプロモ-タ-、オペレ-タ-領域を欠失しても活性が認められ、E蛋白質により抑制されることがわかった。このプロモ-タ-はincB領域より上流にあり、σ^<70>RNAポリメラ-ゼによって読まれる。4.Fと同様、Rtsl PlプラスミドはrpoH欠失変異株で複製出来ない。各々のRep蛋白質を共存させると複製出来ることがわかった。これらのrep遺伝子の転写開始点を決め、σ^<32>因子依存性を調べた。Rtslはσ^<32>因子依存であったがPlについては転写活性が低く明らかでない。5.熱ショック蛋白質であるDnaK,DnaJ,GrpE蛋白質はF,Pl,Rtslの複製に必要であることがわかった。これらの蛋白質の要求性は過剰のRep蛋白質が存在する場合、Fの場合、repE遺伝子のコピ-変異がある場合、要求性がなくなることがわかり、Dnak,DnaJ,GrpE蛋白質はRep蛋白質の補助的な役割をしていることが推定される。さらにdnaJ変異株で複製出来るようになった変異ミニFを多数分離し、解析した結果、多くはrepE遺伝子のコピ-変異であることがわかった。
|