大腸菌RecA蛋白質は、相同的DNAの組換えの反応機構を解析する上で重要なモデルケ-スであり、本研究では、RecA蛋白質の構造的側面に焦点を当て、その分子機構を理解しようとしたものである。63年度および64年度を通じて明らかになったことは、1)80cIリプレッサ-の変異体を解析することにより、RecA蛋白質中はリプレッサ-の構造変化にのみ関与し、活性中心に関与しないことを明らかにした。その結果、RecA蛋白質中にはプロテオリシス反応に直接関与する機能ドメインは存在しないことが示された。2)DNAとの結合がより強固となった欠失変移型RecA5327蛋白の生化学的解析により、RecA5327蛋白質において欠失しているC末端25アミノ酸残基はRecA蛋白質のDNA結合を負に制御する領域であることが示された。3)RecA遺伝子をそのN末端あるいはC末端側からトランケイトして作成した約20種類の欠失変移型RecA蛋白質のin vivoにおける野生型RecA蛋白質の機能阻害効果から40ー60残基領域がRecAーRecA蛋白質間のhydrophobicな相互作用を司っていることが強く示唆された。4)以上のドメイン解析から、Dル-プ形成におけるRecA蛋白質の分子機構を必要最小限の機能ドメイン、すなわち、一か所のDNA結合部位、二か所のRecA-RecA相互作用部位、ATPaseドメイン、で説明するHead-to-Head Dimerモデルを構築した。本研究により、相同的DNA組換え機能におけるRecA蛋白質の具体的な分子機構を証明するための材料と作業仮説がえられた。今後は、DNA結合能の負の制御を欠落したRecA5327蛋白質を用いてDNA結合部位を同定すること、および、一か所のRecAーRecA相互作用部位を欠落したトランケイトRecA蛋白質を用いて、蛋白質間相互作用を解明することにより、モデルの実証を目指す。
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