真核生物のモデルケ-スとしての酵母サッカロミセス・セレビシェでは、動原体DNA(CEN)が単離されて居り、自律複製能を有るす配列(ARS)と共に作製されたプラスミドは、ミニ染色体として酵母内で比較的安定に存在しうる。本研究では、湿度感受性変異株のうち、中間温度でミニ染色体が不安定になるものを選択し、その表現形を調べると共に、遺伝子産物が複製や分配にどのような役割りを果しているかを明らかにすることを目的としている。アデニン要求性株が赤白コロニ-を形成することを利用して、ミニ染色体の安定性をコロニ-の色で識別する方法が開発されているので、いくつかの温度感受性変異株とかけあわせ、ミニ染色体の安定性に温度依存性があるものをスクリ-ニングした。今年度は、新たに、3種、ts12、ts22、ts47が見つかった。ts12はピンクや白のセクタ-に、赤いセクタ-も観察され、染色体の分配に関与している可能性がある。tsは、温度を制限温度にすると、大きな芽を出したところで形態が止まり、いわゆるcdc変異株の一つと考えられる。今後は、遺伝子をクロ-ニングして解析する予定である。すでに詳細な研究が進んでいるgst1変異株については、ヒトのhomologueが単離された。ヒトGST1タンパクは、酵母タンパクに比べ分子量が小さいが、酵母gst1X^<ts>を部分的に相補した。機能的にも似た働きをしていると考えられる。血清で刺激して細胞周期を同調化させ、mRNAの量を経時的に調べると、S期に入る直前に最も発現量が上がることが判った。酵母GSTIが、GI期よりS期への移行に欠損のある細胞周期変異株であることを考えあわせると、興味深い。
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