巨大アメーバ型細胞である粘菌を、光、温度、種々の化学物質で刺激して、知覚行動の発現に伴って生じる細胞内化学成分の二次元時間空間パターンを解析した。 (1)細胞内ATP濃度は、一方向への移動、方向変換、光刺激、壁への衝突、細胞融合などにともなって、極性のある分布、うねりの激しい分布、平坦な分布など行動に対応した分布パターンをとった。自律的に形成される化学パターンが細胞骨格系を再配列し、行動を誘発していると考えられる。 化学物質(アミノ酸、塩類、糖類など)が存在すると、細胞の移動が抑制された。この時ATP濃度の減少、あるいはATP分布の不規則さの増大のいずれかが起った。前者では収縮リズムの振幅が減少し、後者では振動位相の異なるドメインがあちらこちらにできた。このとき振動間の相関は低下していた。自励振動子の集団における協同的挙動が細胞の移動にも関連していることがわかった。 (2)細胞内カルシウム濃度をフラ2AMを用いて比蛍光法により測定する画像処理システムを自作した。粘菌の場合自家蛍光が強くて測定が困難であったが、ヒト表皮角化細胞を用いて細胞内カルシウムを測定できた。核内は細胞質よりやや低い濃度であった。紫外線照射により細胞内カルシウムは増加することを見いだし、その作用スペクトルを決定した。 (3)ラット肝臓由来のミトコンドリアを用い、紫外線照射による活性酸素の生成をスピントラップ法により測定した。その作用スペクトルは、細胞内カルシウム増加のそれと一致した。ミトコンドリアに紫外線受容体があると予想される。
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