1.前年度は我が国及び欧米のエネルギ-教育の現状を調査し、問題点並びに参考にすべき点を明らかにした。本年度はその結果を踏まえて、まず現行の教科の枠内でのエネルギ-教育のあり方を検討した。社会科においては、人類の歴史とエネルギ-消費量の推移を関連付けて学習させ、その延長線上に将来があるということを強調すべきであり、理科においてはエネルギ-変換の原理、法則の説明のみに終始するのではなく、生活に密接な変換過程における変換効率と、その際生じる損失と、損失エネルギ-の行方について環境問題に関係させて説明を加えることを提案した。また、技術科、家庭科においては各領域を生活工学的立場からとらえ、生活するのに必要なエネルギ-についての記述を各領域に盛り込み、さらに家庭で実践し得る省エネルギ-や節エネルギ-の方法についても考えさせる内容が必要であることを指摘した。 2.昭和62年に新設が確定した「生活科」におけるエネルギ-教育のあり方を、西独のGrundschuleの1〜4学年における総合科目である「Sachunterricht」を参考にしつつ検討した。エネルギ-教育は単なる知識教育では意味がなく、正しい理解に基づいた判断と実践が必要な科目である。したがって、初等教育の最初からの教育が重要であると考え、小学校の「生活科」におけるエネルギ-単元の設定を試み、それに続く小学校理科B区分の学習内容の検討も行った。 3.エネルギ-教育は典型的な広領域教育の一つである。したがて、理科、社会科、技術科、家庭科という現行の教科の枠内での改善だけでは体系的に行うことが不十分であることは明らかであり、そこで現行の教科の枠にとらわれることなく、新しく「エネルギ-科」という教科を設定することを提案し、その内容の一例を示した。
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