この研究は、生理・生化学分野の定量的実験教材の開発を目的としている。おおむね初期の目的が達成できたので、その概要を述べる。 1.微生物の成長を測定する装置の開発:太陽電池、テスタ-、自作した簡単な増幅器、及び丸型蛍光灯を用いて装置を作った。クラミドモナスやコウボキンを純粋培養し、その成長を測定したところ、従来の光電光度計での測定結果とほぼ同じ結果が得られた。本装置の特徴は、(1)三角コルベンに培養したままで測定できるから、無菌操作が省け、測定毎に培養物が減少することがない。(2)測定操作が簡単で、一回の測定は1、2分で終わる。(3)製作費が安く、専門家でなくても作れる。(4)場所を取らない。(5)普通の明るい部屋で測定できる。ことなどがあげられる。 2.光合成・呼吸測定検容計のテレビカメラを使った一斉実験装置の開発:従来の検容計のゲ-ジ管内の指標に色素液を用いることによって検容計をテレビに映し出し、その画面からデ-タを読み取ることが出来るようにした。また、濃淡のあるフィルタ-を作り7個の反応室の照度を段階的に変えるようにした。その結果、各照度での光合成速度が一度に測定できるようになり、光合成の光飽和曲線が短時間で求められるようになった。陽葉と陰葉の比較や温度の影響など、従来の方法では時間のかかる実験でも1時限内に出来るようになった。 3.SO_2ガスの植物に及ぼす影響を調べる実験方法の開発:簡単なSO_2暴露法と簡易呼吸測定法を使って、発芽種子や花弁の呼吸に及ぼすSO_2の影響を調べる方法を確立した。花弁ではSO_2暴露によって短時間で著しい可視障害のでるものがあり小学生でも観察できる。 4.植物の根圧を数分間で測定する装置の開発:国内外共にきわめて例の少ない測定方法で、根の吸水に及ぼす呼吸阻害剤やATP合成阻害剤の影響を調べた。根の吸水の研究や教育に役立つものと思われる。
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