本研究課題の研究結果は、下記の四編の論説にまとめられ公表した。 1.伝播性破壊確率モデルと最大加速度・rms加速度:有限な断層面上に分布する不均質な破壊領域(断層パッチ)のランダムな破壊過程を考え、決定論的に記述されるマクロな断層破壊と確率論的に表現されるミクロな断層破壊過程の定式化を行った。 2.ランダム波動のフラクタルスペクトル構造:この研究では、断層パッチのサイズ分布がどの様に短周期震源スペクトルを決めているのかを明らかにした。震源スペクトルがw自乗以外のふるまいをするときそれが断層パッチのサイズ効果であることを理論的に示した。 3.最大加速度・rms加速度の方位依存性:断層の破壊伝播が一方向型か両方向型かにより、強震加速度振幅は異なる方位依存性を示す。短周期ランダム波動にあらわれるこの性質が、最大加速度の方位分布に見い出されることを、1983年日本海中部、1968年十勝沖地震の強震観測記録から示した。 4.断層破壊伝播速度と被害地震の深度分布:この研究では、短周期波動のドップラー効果の理論にもとづき、日本と中国での被害地震の深度分布から、断層破壊様式や破壊伝播速度、また断層面の不均質性を普遍的に明らかにした。短周期地震波を励起する断層パッチのランダムな破壊伝播速度が、平均的には、津波速度の0.7〜0.9倍程度であることが示された。
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