本研究は、集中豪雨をもたらしたクラウドクラスターについて、事例解析を行なったものである。昭和56年8月3日から6日にかけて北海道では大雨が降り続き、各地に大被害をもたらした。この集中豪雨の前半の期間中に、静止気象衛星の画像で5個のクラウドクラスターが検出された。そのうちの3個が豪雨域の中心地である岩見沢上空を通過し、降雨量の時間変化図には6時間周期の変動として三つの降雨群が明瞭に見られた。また3時間降雨量のSR解析によれば、そのクラウドクラスターによる降雨域は、北海道中央部を南南西から北北東へ移動したことが確認された。 次に、そのクラウドクラスターを構成している積乱雲のふるまいを調べるために、20分降雨量のSR解析を行なった。それによると、一つのクラウドクラスターは、6〜8個の積乱雲から構成されていて、それらの積乱雲は60〜70Km/hの速度でクラウドクラスターの移動方向と同じ方向へ移動したことが解析された。このことは、レーダー解析によっても確認された。 その各々の積乱雲によってもたらされた降雨量は、岩見沢付近の特定の領域で最大値となった。このことによって、岩見沢地方の集中豪雨が形成された。 以上の解析結果から次のようなことがわかった。クラウドクラスターは、複数個の積乱雲によって構成された積乱雲群であり、一つのクラウドクラスターを構成している各々の積乱雲は、移動中にほぼ同じ場所で最盛期となる。それによってクラウドクラスターは、発達する。またクラウドクラスターは、長い移動の間にそのようにして発達、衰弱を繰り返す。
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