本年1月から3月にかけて、金沢、富山、高田、秋田、札幌の日本海側の各地において降雪試料の採取を行った。これらの豪雪試料について水を構成する元素である、水素と酸素の安定同位体および水素の放射性同位体であるトリチウムの測定を行うとともに、陸にのみ起源を有するラドンの娘核種^<210>pbを測定する。さらには、主要化学成分の測定も行っているが、測定は完了していない。 他方、昭和62年と63年の1月から3月にかけて敦賀、金沢、富山、札幌で採取した降雪試料について、酸素同位体組成(δ^<18>0)と主要化学成分を行った。えられたδ^<18>0データと、すでに測定されていた琵琶湖周辺地域の降雪のδ^<18>0データについて、降雪のδ^<18>0に関する理論的な考察結果との比較を行ったところ、降雪のδ^<18>0値への水蒸気供給の反映は、琵琶湖については理論的考察結果と良く一致したにもかかわらず、日本海については理論的考察結果と一致しなかった。これらのことは、北陸地方の降雪への日本海からの水蒸気供給が、北陸地方の降雪をもたらすのに不十分であることを示すという見方もできるが、逆に、未知の降雪の生成メカニズムの諸過程を反映したものであるとも考えられる。 従来の降雪に関する安定同位体などの地球化学的測定結果が、気象学的研究結果、特に日本海側の降雪の水蒸気源は日本海であるという常識と矛盾することが多かった。しかし、上述の一致は、地球化学的測定結果が、雪の生成メカニズムを反映したものであり、不一致は地球化学的測定結果に反映されている雪の生成メカニズムの解釈が不十分であった可能性を示している。降雪の総合的な地球化学的測定結果が雪の生成メカニズムに関して有用な情報を提供する可能性が大であることが明らかになり、本研究の意義が一層高められたといえよう。
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