本研究においては、二次元平面流れの解析に基づいて氾濫水の挙動をシミュレートし、流域内に避難経路、交差点および避難地からなる避難ネットワークを構成し、氾濫水のdynamicな挙動を考慮した避難のシミュレーション法を提示した。氾濫シミュレーションについては研究代表者らがこれまでに得てきた成果を応用しているが、氾濫解析から得られる時々刻々変化する水深等の情報をいかに避難のシミュレーションに組み込むかが避難行動をシミュレートする上で重要となる。ここでは、氾濫計算に用いた格子の中央を通る直線群から成る幹線避難ネットワークとして国道などの主要道路を選んで構成し、避難行動を避難地までの最短経路選択問題に定式化して避難行動をシミュレートした。その際、氾濫水深の規模、疲労および群集流動による歩行速度の低下を考慮した避難を考えている。避難住民は最初ネットワークの上にのみ位置するわけではないので、住民の存在位置をいくつかの住区に区分し、この住区内から最寄りのネットワーク上のノードへ出るまでの過程も考えている。 任意地点に位置する住民と任意地点の避難地間の最短経路は、Warshall-Floyd法によって求めた。住区内から最寄りのノードまでの最短経路についても同様に求めた。 以上のような氾濫計算を避難行動のシミュレーション手法をリンクした解析を下層のモデル流域を対象として行い、避難行動のシミュレーション手法の妥当性を検討した。その結果、本手法によってある程度実際に近い避難行動のシミュレーションが可能となることが判明した。ついで、本手法を京都盆地南部の巨椋流域に適用し、種々の避難条件のもとでの避難の難易も検討している。この手法をより実際的な避難行動をシミュレートできるものにするには、実際の災害に対するアンケート調査で得られた成果等を取り入れた解析を行う必要がある。
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