酸性雨が陸域生態系におよぼす影響の事前評価とそれに基づく対策の検討

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63602021
• 研究機関: 東京農工大学
• 研究代表者: 戸塚 績 東京農工大学, 農学部, 教授 (00109901)
• 研究分担者: 小倉 紀雄 東京農工大学, 農学部, 教授 (30015127) ; 小林 喬郎 福井大学, 工学部, 教授 (90006247) ; 大羽 裕 筑波大学, 応用生物化学系, 教授 (30015622) ; 吉田 稔 岩手大学, 農学部, 教授 (70003720) ; 大喜多 敏一 桜美林大学, 文学部, 教授 (40077201)
• キーワード: 酸性雨 / オゾン / 大気汚染物質 / 土壌酸性化 / 陸域生態系 / 土壌緩衝能 / 数学モデル / 酸性沈着 / 植物生長

研究概要

特定地域における大気汚染物質降下量の実態を把握し、国内における大気汚染物質の発生源と排出量、酸性雨生成との関係を示す数学モデルの開発をすすめた。一方、各種土壌の酸性雨に対する緩衝能を測定するとともに、各種植物の生長に及ぼす酸性雨、O_3、Al^<3+>の影響を検討した。また、関連分野の既存資料を収集して公刊した。
1.大気汚染物質の拡散・沈着モデルの開発:前年度に引きつづき、酸性物質の沈着量が国内のSO_2、NO_X発生源でどの程度説明できるかを名古屋、大阪、広島、長崎の合計8地点で春と秋に数学モデルを使って予測した結果、各地点に流入する初期濃度の重要性が示唆された。
2.大気汚染物質の沈着量の測定:スギ林、コナラ林、林外の各1地点で1987年1月〜1988年に12月まで雨水の成分分析を行った。林外雨のpHは3.9〜5.6、林内雨のそれはコナラ林で4.5ー5.9、スギ林で3.6〜5.6であった。雨水中の各成分量は各調査地点で顕著な差異が認められた。また、北関東地方の4地点で、雨水pHと大気の流路の変化と関係を検討した。
3.各種土壌の緩衝能の評価:土壌酸性化に伴って溶出する易交換性Al^<3+>量の測定法を検討し、KClとBaCl_2を2:2の混合溶液による抽出の最適であった。昨年度に引きつづき、我が国の代表的土壌についてカラム透水により酸性雨に対する土壌緩衝能を測定した結果、土壌緩衝能の順序は多腐植質黒ボク土=淡色黒ボク土>褐色森林土>赤黄色土>砂丘未熟土であった。また塩化物イオンおよび硫酸イオンの吸着容量と土壌溶液中の水素イオン濃度との関係を検討した。
4.陸上生態系に対する酸性雨の影響について:ハツカダイコンの生長に対する酸性雨とO_3の複合影響を検討するとともに、スギの生長に対するAl^<3+>の影響を調べ、水耕液中のAl^<3+>濃度が30ppmで相対生長率が低下した。一方、陸水の酸性化に対する緩衝能を評価する水質指標を検討した。

研究成果

• [文献書誌] Sasaki,K.;Kurita,H.;Carmichael,G.R.;Chang,Y.S.;Murano,K;Ueda,H.: Atmos.Environ.22. 1301-1308 (1988)
• [文献書誌] Izumi,K.;Murano,K.;Mizuochi,M.;Fukuyama,T.: Environ.Sci.Technol.22. 1207-1215 (1988)
• [文献書誌] 村野健太郎: 自然保護. (1989)
• [文献書誌] 村野健太郎、大喜多敏一、堀江勝年、松本光弘、戸塚績: 第29回大気汚染学会講演要旨集(1988)大気汚染研究協会. 366 (1988)
• [文献書誌] Okita,T.: Physica Scripta. 37. 245-251 (1988)
• [文献書誌] 小林喬郎、古川悟、大垣龍男: 第12回レーザセンシングシンポジウム予稿集. 115-116 (1988)
• [文献書誌] 小林喬郎、中辻正則、山田辰之: 第12回レーザセンシングシンポジウム予稿集. 77-78 (1988)
• [文献書誌] Kobayashi,T.;Yamada,T.: Abstracts of 14th International Laser Radar Conference(Italy). 67-69 (1988)
• [文献書誌] 小林喬郎: レーザー研究. 17. (1989)
• [文献書誌] Sadakata,M.;Sakai,T.;Tominaga,H.;Yamamoto,S.;Suzuki,K.: 22nd Symposium(International)on Combustion,1988. (1988)
• [文献書誌] 茂木昌己、定方正毅: 化学工学. 52. 749-751 (1988)
• [文献書誌] Sadakata,M.,Mochizuki,H.Sakai,T.,Okazaki,L.,Ono,M.: Combustion and flame. 74. 71-88 (1988)
• [文献書誌] 吉田稔、川畑洋子: 日本土壌肥料科学雑誌. 59. 413-415 (1988)
• [文献書誌] 岡田真一、岡崎正規: 粘土科学. 28. 200-204 (1988)
• [文献書誌] Murano,Y.;Nagatsuka,S.;Oba,Y.: Joural of Forensic Sciences. 33. 1360-1368 (1988)
• [文献書誌] Kawai,T.;Miyamoto,K.;Aoyama,K.;Umezawa,Y.;Otsuki,A.: Verh.Internat.Verein.Limnol.23. 764-769 (1988)
• [文献書誌] Ambe,Y.;Horiuchi,S.;Kawai,T.: Verh.Internat.Verein.Limnol.23. 90-95 (1988)
• [文献書誌] 河合崇欣: ぶんせき. 1988(12). 926-931 (1988)
• [文献書誌] 戸森績: 燃料協会誌. 68. 200-209 (1989)
• [文献書誌] 野内勇、高崎強、戸塚績: 大気汚染学会誌. 23. 355-370 (1989)
• [文献書誌] Okano,K.;Machida,T.;Totsuka,T.: New Phytologist. 109. 203-210 (1988)
• [文献書誌] 伊豆田猛、堀江勝年、三宅博、戸塚績: 人間と環境. 14. 12-22 (1988)
• [文献書誌] 伊豆田猛、船田周、大橋毅、三宅博、戸塚績: 大気汚染学会誌. 23. 209-217 (1988)
• [文献書誌] 伊豆田猛、滝川正義、堀江勝年、三宅博、戸塚績: 大気汚染学会誌. 23. 284-292 (1988)
• [文献書誌] Miyake,H.;Matsumura,H.;Fujinuma,Y.;Totsuka,T.: New Phytol.111. (1989)
• [文献書誌] 小倉紀雄: 人間と環境. 14. 20-23 (1988)
• [文献書誌] 小倉紀雄: 季刊環境研究. 70. 6-16 (1988)
• [文献書誌] 小倉紀雄: 第2回環境データ処理研究会報告書(国立公害研究所). 65-72 (1988)
• [文献書誌] 及川紀久雄、鈴木義仁、砂原広志、田中一彦、二木安之、本間春雄、松下駿、武藤義一、村野健太郎: "機器分析実技シリーズ、イオンクロマトグラフィー" 共立出版, 1-246 (1988)
• [文献書誌] 小林喬郎: "応用物理実験学(統計現象)" オーム社, 14 (1989)
• [文献書誌] 大羽裕、永塚鎮男 共著: "土壌生成分類学" 養賢堂, 1-338 (1988)
• [文献書誌] 小倉紀雄 他: "湖沼汚染の診断と対策(服部明彦 編)" 日刊工業新聞社, 271 (1988)
• [文献書誌] 小倉紀雄 他: "アメニティを考える(AMR 編)" 未来社, 360 (1989)